kongitsune’s diary

県道走行、名所旧跡訪問などの記録

富山(宮城県松島町)

2022年10月初め、富山(とみやま)を訪問しました。松島の中心部から5Km弱ほど北西に位置する標高約116mの山です。山頂には富山観音があり、そこから少し下ったところに大仰寺があります。富山は松島四大観の一つに数えられ、ここから松島湾を一望できる景勝地として知られています。大仰寺の庭園からの松島湾の眺めは息を飲むような美しさでした。

誰もが知る通り、元禄2年に松尾芭蕉は松島を訪れました。おくのほそ道に富山の記述はありません。一方、芭蕉に同行した曾良の日記には「とみ山モ見ユル」との記述があります。雄島から松島湾を隔てて富山を望んでいる様子です。芭蕉もおそらく名所であることは聞いていたのでしょうが、時間的な都合など何らかの理由で訪ねる判断には至らなかったようです。

大仰寺の庭には紫雲閣と呼ばれる建物があります。明治9年明治天皇が東北巡幸の際に立ち寄られました。ガラス越しに中の様子をうかがってみると、明治天皇の肖像写真が掲げられていました。

幕末にペリーが来航した年の一年前、嘉永5年3月に東北遊歴中の吉田松陰も訪れています。その様子は東北遊日記に記されています。

取便道登富山。々上有寺。望松島。一眸無遣。

秋天牢晴。則見富士山于未位。故以名云。

山有杉栢良材。

(矢本から松島に向かう途中)近道を通って富山に登る。山の上に寺がある。そこから松島を望む。景色をあますところなく見渡せる。秋晴れの日には未(ひつじ)の方位(南西)に富士山が見える。故に(富山)と名付けれらたと云う。山は良材となる杉や柏の木々で覆われている。

 

この中で興味を持ったのは則見富士山という箇所です。間違えているかもしれませんが、富山から富士山が見えると解釈しました。松陰は寺の住職もしくは地元の人からそのような話を聞いたのでしょうか。現在、富士山が見える最北端は福島県の山とされていますので、非常に謎です。

調べてみたところ江戸時代に描かれた「奥州富山大仰禅寺眺望之全図」という絵図がありました。名称通り富山からの眺望を描いたものですが、遠方に富士山のような山の形が描かれています。この絵と何か関連があるのかないのか、、、疑問が深まるばかりです。

ともかく、時間を隔てているものの吉田松陰と同じ地に立って、同じ景色を眺められたことが一番の収穫でした。

紫雲閣

庭園

庭園からの眺め